私は心臓をばくばくと鳴らしながら階段を上がり、そして後ろ手に自分の部屋のドアを閉めた。
 自分が今からしようとしている行為がどれだけ馬鹿げているか、それはよく理解しているつもりだった。
 けれど、そんな理性より未知なる快楽への好奇心が上回っていたし、残念ながら今ここに、私を咎めてくれる人はいなかった。
 みぃみぃと愛くるしい声で鳴く八匹の仔猫。
 ――私はベッドに腰を掛け、おもむろに制服のボタンに手をかけた。



  pussy cat



「んっ……くぅ…」
 私のなかで、浩平のものがぴくんと跳ね上がる。
 その心地良さに私は身を委ね、そして浩平を受け入れた。
「……ん…」
 そしてその行為を終えると、浩平は力無く私の胸に顔を埋めた。
「…浩平、疲れてる…」
 そう言いながら、くしゃくしゃと頭を撫でてあげる。
 私と浩平が付き合い始めて、そして例の一年のブランク。
 その隙間を埋めるように、浩平が帰ってきてからというもの、私たちは何度も身体を重ね合った。
「んー…瑞佳…」
「…なに? 浩平」
「ちょっとの間…こうさせてくれ…」
「…うん、いいよ」
 私の腕を枕にするように寝転がってきた浩平を、私は少しだけ体の向きを変えて、ぎゅっと抱き締める。
 すると浩平は、私の腕の中で、ちょっとだけ嬉しそうに微笑んだ。
 初めのころこそ強がっていた浩平も、最近になって、少しずつ私に甘えてくれるようになった。
 普段はどこか意地っ張りな性格だけど、こういう時だけは素直な一面を私に見せてくれた。
 …けれど……。
「……」
「…ん? 浩平?」
 少しだけ頭をゆする。
 しかし、反応はない。
「…寝ちゃったのかな…」
 ため息混じりに苦笑いをこぼす。
 私に甘えてくれるのは嬉しい。
 こうやって私の胸で安心したように寝息を立ててくれるのも、本当に嬉しい。
 だけど…。
(私…まだ満足してないよ…?)
 少しだけ不満が残りながらも、私は浩平を抱きながら、同じように眠りへとついていった。
 浩平は私を好きでいてくれてる。私を愛してくれている。
 そのことが嬉しかったから、ひとまず満足することにした。
 もっと激しくしてほしいとは、恥ずかしくて言えなかった。



  ◇



「…ふぅ」
 浩平の家を後にした私は、寄り道もせずに自分の家へと戻ってきた。
 寄り道もせず…とは言っても、家がこうも近くては帰りに寄る場所もない。
 シャワーは浩平の家で浴びてきた。夕食までまだ時間がある。
 だから、家に帰ってきた私は、そのままの足取りで自分の部屋へと戻った。
「はふぅ…」
 ぱふっとベッドに身を預ける。
 さっきの浩平とした時の余韻が、まだ頭の中に残っている。
「んぅ……」
 時計の方に目をむけ、もう一度時間を確認する。
 そして私は…ゆっくりと、自分の秘部へと手を伸ばした。
「っ……」
 スカートの上からでも熱くなっているのが分かる。
 ここにさっきまで、浩平のものが…。
「あっ…」
 少し指を曲げただけで、吐息が洩れる。
 私は下着の中に指を滑り込ませ、指の腹をそこに宛がった。
「もう濡れてるよぉ…んぅ」
 少しだけ指で恥ずかしい部分を押し開く。
「ひゃっ」
 思わず、腰が跳ね上がる。
 一番敏感な部分に指が触れた時、思わず声をあげてしまった。
「ん…んぅ…」
 中指と薬指でそこを擦り上げる。
 体が熱い。
 ぬるぬるのものが私の指につき、それを固くなったところに擦りつける。
「ひゃぁ、ひゃぁ…あっぅ…」
 もどかしくなって、私は一度指を放す。
 制服を脱ぎ、シャツをたくし上げ、下着を脱ぎ、ブラジャーも外して。
「んぅ……んっ…」
 枕に額を押し付けるようにして腰を突き上げ、右手で秘部を擦る。
 左手を胸にあてがって、揉みしだく。
「あっ…ひゃぁ…」
 腰をくねらせながら指を動かす。
「んっ…あぅっ」
 浩平の熱いそれが入っていたところに、二本の指が入っていく。
 くちゅくちゅといやらしい音を立てながら、それでも指の動きは止めない。
「ひゃあ、ひゃあぁぁ」
 下から浩平が突き上げてくれてるみたく腰をくねらせる。
 指と指の間からいやらしい雫が垂れて、手のひらを伝っていく。
「ひゃぅ…あっ、あぅっ、ああ…」 
 頭の中が変になっていく。
 体の中からこみ上げてくる何かが私に襲い掛かってくる。
 それでも私は枕に縋るようにして、指を動かし続けた。
「もっと…もっとぉ…」
 だんだん動きが大きくなっていく。
 右手はがくがくと震えているし、左手はそれに耐えるようにシーツを握っていた。
 私のぬるぬるになっているそこは、それでも快感を求めるようにきつく締付けてくる。
 指を入れたまま左右に、上下に揺すぶる。
「ひゃぁぁ…」
 手のひらを押し当てて、指を深く挿入したまま掻き回す。
 固くなっていた部分が露出して、ぬるぬるの手に激しい摩擦を与えられる。
「んぅ…いく…いっちゃうよぉ…ひゃ、ひゃぁ」
 額を枕に擦りつけながら、快感を惜しむように指を激しく動かす。
 体の中から溢れ出してきた快楽は、一気に私を包み込んだ。
「いく、いくっ、いくっ、いっ…ひゃっ、ひゃぁぁぁっ!」
 腰がガクンと落ちて、私は何度も痙攣を繰り返しながらベッドに身を預けた。
「はぁ…はぁ…はぁ…」
 あお向けになって、息を整える。
 見なれた天井が、ただ呆然と私を見下ろしていた。
「…ふぅ」
 …ふと、ため息交じりについて出た声。
(私…いつからこんな風になっちゃったんだろう…)
 こうしたひとりでの行為の後に、必ずといっていいほど襲ってくる形のない罪悪感。
 浩平とちゃんとした交際をはじめるまでは、普段こういうことはしなかった。
 そして、浩平とそういった行為をしてからも、別に変わることはなかったはずだ。
 あれは…何度目かの時だっただろう。
「……」
 浩平だけ気持ち良くなって、私だけ取り残されたような感覚を受けたことがあった。
 その日、私はどこかはがゆいまま帰路につき、そしてはじめて自慰を覚えた。
 それからというもの、ほとんどがこの調子だった。
 浩平との行為に飽きたわけではなかった。浩平の私への思いをいつも受け取ることができた。
 エッチをするということに、それ以上のことを求めてはいけない。まして、もっと気持ち良くして、なんて…。
「…ひゃぁっ!?」
 突然耳に受けたくすぐったい感触に、私は思わず身じろいだ。
 そして反射的に、その方向へと視線を向ける。

  にゃあぁ

「…もう」
 その声の主に、思わず苦笑いを浮かべる。
「ミミ、良い子だから驚かせないでよぉ」
 仔猫が一匹、いつのまにか私のベッドに上がりこんできていたのだ。
 名前はミミ。活発で、元気で、ちょっとだけやんちゃなところがある仔猫。
 私の声が届いたのか、ミミはごめんなさいといったような仕草で頭を下げて、小さくにゃあと鳴いた。
「私、耳は弱いんだよ…」
 そう言う今も、まだミミのちょっとザラザラした舌の感触が残っている。
 …ふと、変なことを考えてしまった。
 けれど、私はそんな考えをすぐに捨てようとした。
「……」
 鼻先に指を差し出す。
 するとミミは、ぺろぺろと私の指を舐め始めた。
(確かに…ちょっと気持ちいいかもしれないけど…)
 もしこの場に浩平がいてくれたら、こんな私を咎めてくれるだろう。
 もし私が浩平とのそういった行為に満足していたら、そんなこと思いもしなかっただろう。
 一度湧き上がった気持ちをかき消すには、私はあまりにも環境に恵まれていなかった。



  ◇



 次の日。
 大学を後にした私は、いつも通り電車に乗り込む。
 そして最寄りの駅に到着し、帰路につく途中にスーパーに立ち寄った。
 何を買えばいいのか分からなかったので、食料品売り場を一通り見て回る。
 家にあったマーガリンで…とも思ったけど、なんとなくやめておいた。
「あ…」
 視界の隅にうつったそれに、少し立ち止まる。
 そこには、ケーキを作るときにつかうホイップクリームが置かれていた。
(これで、いいかな…?)
 私はそれを手に取り、カゴの中へと入れた。
 これだけだと何かおかしいので、適当にお菓子も放り込んでレジへと向かった。


 家に着いた私は、コートを脱いですぐに自分の部屋へと向かった。
 心臓がバクバクと鳴っているのが分かる。
 後ろ手に部屋のドアを閉めて、カーテンも閉め、明かりをつける。
 買い物袋からチューブ型のホイップクリームを取り出して、他のものは机の上に置いておいた。
「……」
 私はおもむろに、制服のボタンに手をかけた。
 衣服を全て椅子にかけ、下着だけでベッドに寝転がる。
 そしてクリームの口を開き、左手の指に少しだけそれを付けた。
「…ミミ、おいで」
 普段は赤ちゃん用の籠の中に入っている仔猫たち。
 私は籠を覗き込んで、ミミをベッドの上に連れ出した。
 そして、クリームのついた指をそっと差し出した。

  ぴちゃ…ぴちゃ…

「…舐めてる…」
 爪も立てずに、大人しくクリームを舐めるミミ。
 そのちょっとだけざらざらとした舌に、私は喉をコクンと鳴らした。
「…ちょっとだけ、おあずけ」
 ミミの口から指を放す。
 するとミミは、名残惜しそうに鳴きながら、手足をばたばたと騒がせた。
「すぐにまたあげるから…」
 さっきと同じようにチューブからクリームをひねり出し、今度は自分の胸に薄く塗り伸ばした。
 チューブに蓋をして隅に置き、ミミを両手で抱き起こす。
「ほら、ミミ…」
 ゆっくりと、ミミを胸に引き寄せる。
 その時、鼻先がツンと乳首に当たり、ミミはくすぐったそうに顔を引っ込めた。
(ちょっと…無理かな)
 そう思った時だった。
 ミミが首を伸ばし、口先を必至に胸の方へと仰いでいた。
 それに気付いた私は、まるで子供をあやすように、ミミの口元を自分の乳首へと近づけた。

  ぴちゃ…

「んっ…んぅぅ…」
 その刺激に、私は思わずミミを落としてしまいそうになった。
 それでもなんとか前かがみになって、ミミの優しい愛撫にこらえていた。
「ひゃぁ…んっ…」
 ペロペロと私の乳首を舐めるミミ。
 下からすくうように舐め上げられる度に、私はたまらずに声を漏らした。
 がくがくと足が震えている。
 それでもミミは、可愛い顔をして愛撫を続けてくる。
「ちょ…ストップっ」
 思わず右手で胸を押さえ、左手でミミを引き離す。
「はぁ…はぁ……」
 しばらく息を整え、もう一度、ホイップクリームを手にした。
 そして今度は、両方の胸にクリームを塗りつけた。
「…レナも…」
 籠の中でまるまっていたレナをそっと包み込んで、ベッドへと連れ出す。
「ミミは、こっち…」
 さっきまでミミが舐めていた左胸にミミを寄せる。
 ふと目に入ったのは、今までにないくらい固くなって突き出ている乳首。
(すごい…)
 それを見て、さらに下腹部が熱くなってくるのを感じた。
「レナは、こっちだからね…喧嘩しちゃだめだよ?」
 レナは、ミミといつも遊んでいる仔猫。
 猫は全員大好きだけど、特にこの二匹はお気に入りだった。
「ご主人様を気持ち良くさせてね…」
 私は枕の置いてある方に寝転がってあお向けになり、ミミとレナを招き寄せた。
「んっ…」
 まずミミが身体を乗り出して、胸を舐め始める。
「ひゃ……あぅっ」
 そしてレナは、私の身体の上に乗りかかって、ミミと同じように胸を舐め始めた。
 さらさらのレナの毛がこそばゆいようで、どこか気持ち良い。
 それに、レナの方がどこか上手だった。
「んぅ…いいよ…いいよぉ……」
 ミミ達の頭を撫でて、舐めるのを促す。
 ミミは全体的に、レナは先っぽを中心にペロペロと舐めてくる。
 その不思議な感触に、私は思わず身じろいだ。
「ミミもレナも上手…んぅ…」
 両手を放し、シーツを掴む。
 ミミ達はペロペロとおいしそうに私の胸を舐めて、止めようとはしなかった。
「…あっ」
 けれど、まず舌を止めたのはレナだった。
「食いしんぼうさんなんだから…んっ…もっとクリームあげるね」
 ミミがまだ愛撫を続けていたので、私は右手で手繰り寄せるようにしてクリームを探した。
 その時、ふとレナがミミの方に興味を示し、てくてくと歩み寄った。
 そして何を思ったのか、ミミが舐めていた胸を、反対側からレナも同じようにして舐め出したのだ。
「んっ…あ…はぁっ」
 突然の電気が走ったような感触に、私は空を描いていた手で咄嗟にシーツを掴んだ。
 乳首の先の方をペロペロと舐めるレナと、その周りをいとおしく舐め上げるミミ。
「あっ…や……はぁぁっ」
 その急に訪れた快楽は、私を昇りつめらせるのに充分だった。
「も…もう我慢できないよぉ…」
 上半身を起こすと、体の上にのっていたレナがぽとりと膝の上に落ちた。
 それでも私は気にせずに、両手で籠を持つと、ベッドの上に置く。
「ほら、みんな出ておいで…良い子だからね…」
 一匹一匹、優しく籠の中から出してやる。
 そして八匹全員がベッドの上に乗ると、私は籠を下に置いて、今度はホイップクリームを手に取った。
「ん…」
 下着を脱いで、さっきより多めにクリームを指につける。
 そして、もうびちょびちょになっていたあそこにそれを塗りたくった。
 さらにもう少し出して、入り口のところと熱く固くなっているところに付けておく。
 そして手のひらにクリームを搾り出して、胸に塗りつける。
 腰やおへその方にも薄く伸ばしておいた。
 そして私は仔猫たちの方を向いて、体育座りのような姿勢で足を開き、腰を突き出した。
「ほら…いいよ…」
 こうしているだけでも、じわじわと濡れてくる。
 仔猫たちはそれに気付いたのか、一匹、また一匹とこちらに興味を持ち始めた。
 そしてとうとう、その中の一匹が私に歩み寄って、大事なところを舐め始めた。
「あっ…んぅ…」
 やがて他の猫たちもそれに続き、私のところへと近寄ってきた。
「ひゃあ…ひゃあぁぁ…」
 ただ息だけが漏れた。
 腰をがくがくと震わせながらあお向けになると、レナとミミがそれぞれ仲の良いお友達を連れて、胸の方へとやってきた。
 そしてさっきと同じように、ミミ達は左胸を、レナ達は右胸をぺろぺろと舐め始めた。
「ひゃぅぅ…」
 身体中を這う、八つの小さな舌。
 ふたつは左胸を、ふたつは右胸を、三つはあそこを、残ったひとつはおへそに乗せたクリームを舐めていた。
「あっ…だ、だめぇ…」
 腰をくねらせながら身悶える。
 小さな舌が少しだけ中に入ってきたかと思うと、違う仔猫の舌が充血して膨れてきた部分をペロンと舐め上げる。
 尻尾がふとももを優しく撫でてくれる。
「イ、イク、イッちゃう…んぅぅ……んっ…」
 ビクン、と腰が跳ね上がる。
 それに驚いたのか、お腹に乗っていた仔猫は身を翻すようにジャンプして、ベッドの上に着地した。
「んっ…はぁ……はぁ…あぁ…」
 仔猫たちは愛撫を止めようとはしない。
 絶頂を迎えた私は、仔猫たちの優しい愛撫に再び身を火照らせる。
 さらに敏感になってしまったのか、私を舐め回す舌のひとつひとつの感触をより感じるようになってしまった。
「ひゃあ……あぁ…」
 さっき絶頂を迎えたばかりなのに、すぐにまた、身体の底から何かが溢れてきた。
 そして仔猫たちに二度目の絶頂を迎えさせられそうになった時に、それは起こった。
「ん…あぁ…」
 一匹の仔猫が、すでに露出して膨らんでいたところに鼻を押し当ててきた。
 そして、次の瞬間。
 その仔猫が、私の大切なところを指でひっかいた。
 幸いまだ爪はそんなにも生えていなかったが、それでも、人がひっかくくらいの強さはあった。
「…ひゃあっ!?」
 私は身体をビクンと跳ね上げ、えびぞりのような格好となった。
「ひ、ひゃ、ひゃぁぁぁ!!!」
 そのまま身体を痙攣させ、あそこから何かが吹き出るのを感じた時には、もう遅かった。
「ひゃぁ、ひゃぁ、ひゃあっ!」
 頭の中が真っ白になって、おしっこを止めようと思っても、止め方が分からない。
 それでも猫がみんな咄嗟にベッドから離れていくのだけは見えたので、私は腰を落とし、吹き出てくるそれに手をあてがった。
「だ、だめぇぇぇ…ひゃああぁぁぁ…」
 押し寄せてくる快楽に抵抗の仕様もなく、私はおもらしをしながら絶頂を迎えた。


「ひゃああ……んぅぅ……」
 太ももの間に手を挟むようにして…どれくらいそうしていただろうか。
 快感も徐々に収まり――それでもまだ腰は引けていたけど――身体をずらして、ベッドに腰掛ける。
 そして、ちらりとそこを見る。
「…はぅぅ…」
 そこは、見て分かるくらいにひどく濡れていた。
「お父さんやお母さんが帰ってくる前に洗っちゃわないと…」
 いそいそと身体を起こす。
 名残を楽しむ余裕なんて、どこかに吹き飛んでしまったようだ。
 私は動きやすい衣服を身につけ、シーツを畳んで階下へ向かおうとした。
 と、その時。

  にゃあ…

「ん…」
 見ると、八匹の仔猫たちが皆、ベッドの下から私を見上げていた。
 そして私と目が合うと駆け寄ってきて、そして足元に擦り寄ってきた。
「…そっか」
 シーツを置いて、少しかがむ。
「…ごめんね、驚かせちゃって。私は大丈夫だから…心配しなくていいよ」
 言いながら、仔猫たちの頭を撫でてやる。
「すごく気持ち良かったよ…。ありがとうね」
 私の声に応えるようにして、仔猫たちはみぃみぃと鳴き始めた。
「ご褒美は、シーツを洗ってからあげるね。ちょっと待っててね」
 私は立ちあがり、シーツを手に持って、八匹の仔猫がいる私の部屋を後にした。



  ◇



「なあ、瑞佳…」
「ん…なに?」
 咥えていた浩平のものを放して、上目づかいに訊ねる。
「いや…何か急に、うまくなったなって…。まさかお前、他の男と…なんかないよな…?」
 私の頭を撫でながら、少しだけ心配そうに言う浩平。
 私は…思わず、くすっと笑ってしまった。
「な、なにがおかしいんだよ…」
 確かに、私は浮気をしている。
 でも、それは男の子じゃない。
 仔猫だったら許してくれるかな…とか考えて、やっぱり言うのはやめておいた。
 そして、浩平のために、少しだけ嘘をつくことにした。
「大丈夫だよ。私は浩平だけの私だから、そんな泣きそうな顔しないでよ」
「で、でも…なんか、やたらうまくなってるし…」
「浩平のためにいろいろ勉強したんだよ。…気持ち良くなってほしいから」
「ん…」
「だから、浩平も…もっといろいろ勉強してほしいな…」
「…このえっちな奴め」
「うー、私えっちじゃないよー…」
「いや、えっちだ。どえっちだ」
「むー…じゃあもうしてあげないっ」
 ぷいっとそっぽを向く。
「そ、それは…」
「…ねえ、浩平」
「……」
「えっちな私じゃ…嫌?」
「…え?」
 浩平が呆気に取られている隙に、私は浩平に抱き着いて、ふたり重なるようにベッドに倒れこんだ。
「浩平も、えっちになってよ」
「ん…あ、あぁ…」
「…うふふ」
 私は浩平をぎゅっと抱き締めて、そして笑った。



  えんど。





Written by 山本 学
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