冬。
 また、冬がやってきた。
 毎年夏と冬の休みになると、俺は水瀬家のお世話になっていた。
 家の理由じゃない。俺がここに来たかったからだ。
 小学一年の冬から数えて、これで五回目。俺は欠かさずにこの地に足を運んでいた。
 長い長い雪道。やがて見えてくる一軒の家。
「……」
 玄関の前に立ち、表札を確認するでもなく、チャイムを鳴らす。
 しばらくして、そのドアが開け放たれる。
 ――休みを終えた後、俺はずっと退屈だった。
 会えないだけでこんなにも胸が苦しくなって、辛かった。
 会いたかった。ずっと、会いたかったよ。
「いらっしゃい、祐一さん」
 …秋子叔母さん。



  shibo.
  第一夜



 名雪と遊ぶのは楽しい。
 でもそれ以上に、秋子叔母さんと一緒にいる方が楽しい。
 楽しいというより、安心する。ドキドキする。


「…祐一さん、起きてますか?」
 控えめなノックの後、ドアが開く。
 秋子叔母さんのその声に、俺は上半身を起こして頷いた。
「…隣、いいですよね」
 うん、俺は頷き、秋子叔母さんのためにベッドのスペースを空けた。
 羽織っていたカーディガンを脱いで、スリッパの向きを丁寧に揃える。
「失礼します…」
 微笑みを浮かべながら、すっと布団に滑りこむ。
 少しだけシャンプーの香りが漂った。
「…祐一さんも、横になってください」
 …俺ははっと我に返り、さっきまでと同じように布団に潜りこんだ。
「私はこっちですよ」
「……」
 そう言われて、ちらりと右を見る。
 そこには、俺を見つめる秋子叔母さんの瞳。
「…どうぞ、祐一さん」
 俺に向かって腕が開かれる。
 俺は…どうしてだろう、思いとは裏腹に、反対方向を向いてしまう。
「…恥ずかしいんですか?」
 くすくすと笑い声。無意識に身体が縮まる。
「大丈夫ですよ。今は私と、祐一さんしかいませんから…」
 不意に頬に手をあてられ、思わずビクリと揺れる。
 けれど、暖かいその手に俺は安堵の息を漏らし、そっと自分の手を添えた。
「ほら、こっちにきて下さい」
 伸ばされた手が肩へと移動する。
 俺は秋子叔母さんとは反対の方向を向いたまま、後ろ向きに、ゆっくりと距離を縮めて行った。
「頭を…」
 俺が少しだけ頭を浮かせると、滑りこむようにして秋子叔母さんの腕が伸びてきた。
 それと同時に、秋子叔母さんは右手で俺を抱き寄せた。
「……」
 後頭部に感じるふたつの膨らみ。
「…お久しぶりです、祐一さん」
 抱き締められながら、ぎゅっと抱き締められながら。
「私も、ずっと祐一さんが来てくれるのを待ってましたよ」
 顔を見せて下さい、そう言われて、俺はゆっくりと寝返る。
 視線を少し上に向けると、そこには秋子叔母さんの笑顔。
「…祐一さん」
 ゆっくりと、優しく頭を撫でられる。
 俺は…恥ずかしさの余り、秋子叔母さんの顔を直視できずに、俯き気味に胸に顔を埋めた。
「祐一さん…ほら、ちゃんと私の方を向いて下さい」
 頬に手が添えられ、俺はもう一度、秋子叔母さんの方を向いた。
 微笑みを浮かべたまま俺を見つめる秋子叔母さん。その目が薄く閉じられ、唇がゆっくりと俺に近づいてくる。
 俺は肩を強張らせながら、それを受け入れた。
 触れ合うキス。舌が俺の唇の先に触れる。
 秋子叔母さんの手が頬から耳へと添い、優しく頭を撫でてくれる。
「祐一さん」
 …そう呼ばれて、俺は瞼を開く。
「肩の力を抜いて…」
「……」
「それと…口、少しだけ開けてて下さい」
「……」
 本当に、少しだけ口を開く。
「そのままにしてて、下さいね…」
 今度は俺も秋子叔母さんも、目を閉じなかった。
「ん…」
 見つめ合ったままのキス。
「んぅ…」
 秋子叔母さんの舌が、ゆっくりと俺の中に入ってくる。
 思わず離れてしまいそうになる俺を、抱き締められた手がそれを阻止し、逆に俺を手繰り寄せた。
「…はぁぅ…」
 角度を変えて、尚も秋子さんは俺を求める。
 俺の舌に触れてきたので、俺も少しだけそれを動かすと、後はなすがままだった。
 音が漏れ、涎が垂れてパジャマの袖を汚しても、秋子叔母さんはその行為を止めなかった。
「ぅん…ぅ…」
 責め合い、絡み合い。
「…っはぁ…」
 …何分経ったか、実際にはそんなにも経っていないかもしれないけれど、俺はもう頭の中が真っ白になった。
 ゆっくりと唇が放れていく。
「…祐一さん、目がとろんってしてます」
 気持ち良かったですか? そう訊いてくる秋子叔母さんの表情は、どこか紅潮していた。
「感じやすいんですよね、祐一さんは…」
 片手だけで器用に俺のパジャマのボタンを外していく。
 上三つを外したところで、パジャマの中に指を潜りこませる。
「っ…」
 手の平全体で胸を撫でまわされ、変な感覚に声が漏れる。
 腕枕をされたまま、俺は秋子さんの手に、言葉にただ身を任せていた。
 指で円を描くように撫で回し、乳首を摘ままれる。
 ひゅうと息が漏れた。
「少しだけ身体、浮かせて下さい」
 いつのまにか、秋子叔母さんは俺の服のボタンを外し終えていた。
 左手の袖を外し、次いで右手を抜く。
「あは…可愛いですよ」
 にっこりと微笑む秋子叔母さんに、俺は恥ずかしくなって手で身を隠した。
 一応男なんだから、可愛いと言われても嬉しくはない。
 だけど、秋子叔母さんに言われるのは嫌いじゃなかった。
「…祐一さん、ちょっとだけ、いいですか?」
「え…?」
 両手で俺を抱き寄せた秋子叔母さんは、俺の左手を持ち、自分の頭の後ろ側に…。
「…秋子叔母さん?」
「ちょっとだけ恥ずかしいですね…」
 さらさらとした髪の毛がくすぐったい。
 俺の腕の中でくるまっている秋子叔母さんは、どこか小さい時の名雪を思い浮かばせた。
「祐一さん」
「…なんですか?」
「こんなとき、男の人は抱き締めてくれるものですよ…?」
 ちぢこまるようにして擦り寄ってくる。
 秋子叔母さんの息がおへその辺りに感じられる。いつもより少しだけ興奮しているように思えるのは、気のせいだろうか?
 …俺は頭の後ろに回していた左手で、ぎゅっと秋子叔母さんを抱き寄せた。
「ん…」
 少しだけ頭を上下させながら…頬を寄せているのだろうか、少しして満足した様子で、俺の身体をぎゅっと抱き締め、上目遣いに視線を向けた。
「うふふ、堪能しちゃいました」
 くすりと恥ずかしそうな様子で、けれどどこか悪戯をした子供のように、秋子叔母さんは微笑んだ。
 それは、俺が今まで見たことのない、可愛いと思えるような笑顔だった。
「じゃあ、次は祐一さんの番ですね…」
「え…っ」
 すっと視線を戻した秋子叔母さん。
「…っ!?」
 不意に訪れた感触。
 俺は思わず、秋子叔母さんの頭を抱き締めていた。
「っぅ…」
 脇腹から背中にかけてを撫でられ、左胸を舌で舐め上げるようにして。
「秋子叔母さん…っ」
「うふふ…」
 左胸から右胸、首筋、頬へと舌が這っていく。
「んぅ…はぁっ…」
 耳を口に含み、耳たぶから中まで綿密に舐められていく。
 ぴちゃぴちゃと卑猥な音が、より俺を興奮させた。
「はぁ…はぁ…っ?」
 口元へと差し出された人差し指。
「はぁっ…」
 俺はただ無心に…舌を伸ばした。
 指先をちろちろと舐め、そこから指に沿って。
「んぅ…」
 曲げられた二本の指が、俺の口の中へと差し込まれた。
 舌の中央を交互の指で撫でられ、俺も夢中でそれに舌を這わせる。
 耳たぶを咥えられて息が漏れると、秋子叔母さんは指を戻し、その手で俺を抱き寄せた。
「祐一さん…」
 さっき口付けをした時のように、俺の身体は秋子叔母さんの腕の中に収まった。
「手は、ここに…そう、肩を掴んでいて下さい」
 そういって、俺の左手を肩に。
 そして、俺の頬に手をあてて、唇を寄せる。
 口付け。
 その後、頬にあてられた手は首を通り、脇腹を沿って…。
「…っ!」
 秋子叔母さんの手が俺の下腹部へと伝っていくうちに、俺はその意図に気づき、肩を掴む手に思わず力をこめた。
「祐一さん。気を楽にして…」
 …腰まで差しかかった手は、再び俺の頭へと戻された。
「私に甘えて下さい、祐一さん」
 じゃあこうしましょうか、抱き寄せられた俺は、そのまま秋子叔母さんの胸へと顔をうずめた。
「これで、大丈夫ですよね…」
「…うん」
 …手が、添えられた。
「…っ!?」
 手のひらを押し当てられるように、指をそれに這わせて。
 優しくではなく、酷く乱暴に。
「あ、秋子叔母さん…っ!」
「秋子さんって、呼んで下さい」
 手は止まらなかった。
 断続的に息が漏れて、それでも俺は…秋子さんの腕を掴んでしまわないように、肩を握っていた。
 緊張しきっていたそれは今にも果ててしまいそうで、俺は少しでも気を紛らわそうとする。
 しかし、ふくよかな胸がそれをさせなかった。
「ぅぅ…っ…」
「…出していいですよ。下着、後でちゃんと洗ってあげますから」
「秋子…さん…っ」
 俺はふと、秋子さんの顔を見上げた。
 俺を包んでくれる、満面の微笑み。
「んっ…っ」
 唇が塞がれた。
 秋子さんの舌が無理やり俺の中へと入ってきた。
 俺も夢中でそれを求めた。
 舌と舌が絡み合う。
 手のひらと五本の指が俺のものを擦る。
 秋子さんと、目が合った。
 …そこで限界がきた。
「…んっ!!」
 背筋がぴくんと反り返る。
「…たくさん出てますよ」
 二度。三度。
「…ほら、もっとこっちに来て下さい」
 開かれたその腕に飛び込む。
 胸に顔を押し当てる。
「……」
 優しい笑顔。
 暖かい手。
「…気持ち良かったですか?」
「……」
 俺は無言で頷いた。


 俺が覚えていたのはここまで。
 目を覚ました時には既に朝。秋子さんの姿はなかった。



  shibo.
  第一夜 End.


 written by Mana.
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